絵本を作ってみたい、と思ったとき、多くの人はいきなり1ページ目の絵から描きはじめます。そして途中で止まります。
絵本づくりには、だいたい決まった順番があります。先に全体の地図を見ておくと、いま自分がどこにいて、どこでつまずいているのかが分かります。この記事はその地図です。細かい話は、これから一つずつ別の記事にしていきます。
1. アイデアを集める
最初にやることは、話を考えることではなく、種を書きためることです。
子どもが言ったおかしな一言、通学路で見かけたもの、自分が小さいころこわかったもの。ノートでもスマホのメモでもかまいません。ここでは「絵本になるかどうか」を判断しません。判断すると、手が止まります。
種がいくつかたまってから、「これは絵になるか」「めくって見たいか」で選びます。絵本は絵とページで進む本なので、頭の中だけで完結する話より、目に見えて動く話のほうが向いています。
2. お話の形にする
集めた種を、お話の形に組み立てます。絵本でよく使われる型がふたつあります。
ひとつはくり返しです。おおきなかぶは、おじいさん、おばあさん、まご、いぬ、ねこ、ねずみと、同じ動作をくり返しながら人が増えていきます。子どもは同じ言葉がもう一度来ることを喜びます。くり返しは、飽きさせない仕掛けではなく、安心させる仕掛けです。
もうひとつは行って帰るです。かいじゅうたちのいるところは、部屋にいた子が遠い場所へ行き、そしてまた戻ってきます。行きっぱなしにしないのが大事なところで、帰る場所があるから、遠くへ行く話が安心して読めます。
この2つの型については、あとで一本まるごと記事を書きます。まずは「自分の話はどちらに近いか」を考えてみてください。どちらでもない話も、もちろんあります。
3. ラフを描いて、ダミー本にする
ここが、絵本づくりでいちばん大事な段階です。
まずラフを描きます。うまい絵でなくてかまいません。棒人間で十分です。1ページに何を描くか、どこで文を切るかを決めます。
そのラフを、紙を折って本の形にしたものがダミー本です。実際にめくれる、手づくりの試作品です。
なぜ本の形にするかというと、絵本はめくる本だからです。いないいないばあは、めくる動作がそのまま「ばあ」になります。この効果は、紙に並べて描いていても確かめられません。めくって初めて分かります。
はらぺこあおむしのように、ページの形そのものを使った絵本もあります。紙の大きさ、穴、めくりの向き。これらは全部、ダミー本の段階で試すことです。
なお、絵本のページ数には印刷上の決まりごとがあります。これも別の回で書きます。
4. 本番の絵を描く
ダミー本で流れが固まってから、本番の絵に入ります。順番を逆にすると、描き直しが増えます。
絵の描き方は一つではありません。せなけいこは、包装紙や色紙をちぎって貼る貼り絵で描きました。紙のふちのけばだちが、そのままおばけの輪郭になっています。エリック・カールは、自分で色をつけた薄紙を切り抜いて貼るコラージュで、あの鮮やかな色を作りました。
絵が得意でないと絵本は作れない、ということはありません。ちぎる、貼る、写真を使う、線だけで描く。自分が続けられる方法を選ぶほうが、最後まで描き切れます。
5. 仕上げて、人に見せる
最後に綴じて、一冊にします。家でできる製本の方法はいくつかあり、これも別の記事で扱います。
できあがったら、誰かに読んでもらってください。いちばんいいのは、その絵本の読者になる年齢の子どもです。どこでめくる手が止まるか、どこで顔を上げるか。言葉での感想より、その反応のほうが正確です。
外に出す道としては、出版社への持ち込みや、公募への応募があります。募集の条件は主催者ごとにちがい、年によっても変わるので、応募を考えるときは必ず公式サイトの最新の募集要項を確認してください。
全体の流れ
| 段階 | やること | つまずいたときは |
|---|---|---|
| アイデア | 種を書きためる | 判断せずにためる |
| お話 | くり返し/行って帰るで組む | 型に当てはめ直す |
| ラフ | 各ページに何を描くか決める | 棒人間でいい |
| ダミー本 | 紙を折ってめくって確かめる | ここを飛ばさない |
| 本番 | 自分に合う描き方で | 描き方を変えてみる |
| 仕上げ | 綴じて、読んでもらう | 子どもの反応を見る |
まとめ
絵本づくりは「アイデア → お話 → ラフ → ダミー本 → 本番の絵 → 仕上げ」の順に進みます。とくにダミー本を作る段階を飛ばさないことが、最後まで作り切るいちばんの近道です。 各段階の詳しい話は、これから読みもので一つずつ書いていきます。作り方を考えるときは、2歳から読める絵本や4歳から読める絵本を実際にめくって、ページの進み方を見てみるのもおすすめです。