絵本の表紙には、書名のほかに人の名前が書かれています。よく見ると、名前のあとに「作」「絵」「訳」といった小さな文字がついています。
この一文字は、その人が絵本のどこを担当したかを示す目印です。読めるようになると、図書館や本屋さんで次の一冊を探すときの手がかりが増えます。
「作」── ひとりで文も絵も手がけたとき
「作」は、お話を考えた人につく言葉です。ひとりの作家が文章も絵も手がけた絵本では、名前に「作」だけがついていることがよくあります。
たとえばスイミーの日本語版は、「レオ・レオニ 作」。お話も、にじんだ水彩の海も、レオ・レオニひとりの仕事です。
「作・絵」「さく・え」と、両方をまとめて書く本もあります。書き方は出版社や本によってちがうので、「作だけなら、絵もその人のことが多い」くらいに覚えておくと十分です。
「文」と「絵」── ふたりで分けて作ったとき
文章と絵を別の人が担当した絵本では、名前が二つ並びます。
はじめてのおつかいは、「筒井頼子 さく」「林明子 え」。お話を書いたのが筒井頼子、絵を描いたのが林明子です。ここでの「さく」は、文章を書いた人という意味で使われています。
絵の担当は「絵」のほか、「画」と書かれることもあります。意味はほとんど同じです。
絵を描いた人の名前がわかると、同じ画家のほかの絵本にたどりつけます。お話は好みがわかれても、「この人の絵が好き」という感覚は子どもにもはっきりあるものです。
「訳」── 海外の絵本を日本語にした人
海外で生まれた絵本には、「訳」がつきます。原書の言葉を日本語にした人の名前です。
スイミーは「谷川俊太郎 訳」。「にじいろの ゼリーのような くらげ」といった言いまわしは、谷川俊太郎の日本語です。絵本は声に出して読むものなので、訳者によって読み心地が大きく変わります。
訳者の名前は、ひらがなで書かれることもあります。三びきのやぎのがらがらどんの訳者は瀬田貞二ですが、出版社のページでは「せた ていじ 訳」とひらがなで表記されています。漢字とひらがなで印象はちがっても、同じ人です。
このサイトでは、瀬田貞二 訳の絵本のように、訳者ごとに一覧を見ることもできます。
「再話」── 昔話を語り直した人
いちばん見なれないのが「再話」かもしれません。昔話や民話のように、もとは口で語りつがれてきたお話を、あらためて文章に書き直すことをいいます。
おおきなかぶの表記は、「A.トルストイ 再話」「内田莉莎子 訳」「佐藤忠良 画」。ロシアに伝わる昔話をA.トルストイが語り直し、それを内田莉莎子が日本語にし、彫刻家の佐藤忠良が絵を描いた、という三段がまえです。
三びきのやぎのがらがらどんも、ノルウェーの昔話がもとになっています。表紙に大きく出ているのは、絵のマーシャ・ブラウンと訳の瀬田貞二。昔話には「最初に考えた人」がいないので、語り直した人や絵にした人の名前が前に出てきます。
表記のちがいを一覧で
| 表記 | 担当したこと | 例 |
|---|---|---|
| 作 | お話を考えた(絵も同じ人のことが多い) | スイミー |
| 文・さく | 文章を書いた | はじめてのおつかい |
| 絵・え・画 | 絵を描いた | おおきなかぶ(画) |
| 訳 | 外国語から日本語にした | 三びきのやぎのがらがらどん |
| 再話 | 昔話・民話を語り直した | おおきなかぶ |
同じ昔話でも、再話する人、訳す人、絵を描く人がちがえば、別の絵本になります。図書館で同じ題名の本が何冊も並んでいたら、名前のあとの一文字を見くらべてみてください。
まとめ
表紙の名前についた「作」「絵」「訳」「再話」は、その人が絵本のどこを担当したかを示す目印です。気に入った絵本があったら、書名だけでなく、絵を描いた人や訳した人の名前もたどってみると、好みに合う次の一冊が見つかりやすくなります。 まずは手もとの絵本や、3歳から読める絵本の一覧から、表紙の名前を読みくらべてみてください。