読み聞かせがうまくできている気がしない、という声をよく聞きます。声色を使ったほうがいいのか、感情をこめたほうがいいのか。
結論から言うと、上手に読もうとしなくて大丈夫です。読み聞かせで効いているのは演技力ではなく、もっと地味なところ──本の持ち方や、めくる速さや、読んだあとの沈黙のほうです。ここでは、今日から変えられる小さなコツを並べます。
1. 本の持ち方 ── 絵が見えているか
まず確かめたいのは、子どもに絵がちゃんと見えているかどうかです。
ひざに乗せて読むなら、あまり気にしなくてかまいません。問題は向かい合って読むときで、大人が本を自分のほうに傾けてしまいがちです。文字を読もうとすると、どうしてもそうなります。
本は子ども側に向けて、自分は少し斜め上から文字をのぞく。指は絵にかからないよう、ページのふちを持ちます。文が覚えられない本は、読む前に一度自分だけで通して読んでおくと、当日は絵のほうに本を向けたままでいられます。
大きく開いて読みたい本ほど、この差が出ます。おおきなかぶのように、人や動物が横一列に並んでいく絵は、端が見切れているとつながりが伝わりません。
2. めくり方 ── めくる速さが、話の速さ
絵本は、ページをめくることで進む本です。だから、めくる速さがそのまま物語の速さになります。
読み終わった文の直後にすぐめくらない。子どもが絵を見る時間を少し残してから、めくる。これだけで、ずいぶん落ち着いた読み聞かせになります。
逆に、ためを作ったほうがいい場面もあります。いないいないばあやだるまさんがは、めくる動作そのものが仕掛けになっている絵本です。「だ・る・ま・さ・ん・が」と言い終えてから、一拍おいてめくる。そのわずかな間があるかないかで、笑いが変わります。
めくりたがる子には、任せてしまってかまいません。順番が前後しても、絵本は壊れません。
3. 声 ── 声色より、速さと大きさ
登場人物ごとに声を変えなければ、と思っている人が多いのですが、必須ではありません。声色を使うと、子どもの注意が「絵と話」から「読んでいる大人」に移ることもあります。
変えるなら、声色よりも速さと大きさです。追いかける場面は速く、夜の場面は小さく。それだけで場面の空気は変わります。
三びきのやぎのがらがらどんは、その練習にちょうどいい絵本です。小さいやぎ、中くらいのやぎ、大きいやぎと、同じ形のやりとりが3回くり返されます。3回とも同じ調子で読んでもいいのですが、だんだん声を低く、ゆっくりにしていくと、橋を渡る足音の重さが変わって聞こえます。
音そのものが主役の絵本なら、もっと自由でかまいません。もこ もこもこは、読む速さと声の大きさを変えるたびに別の絵本になります。「正しい読み方」がない本です。
4. 質問しすぎない
読み聞かせでいちばん惜しいのが、これです。
「これ何色かな?」「どうしてこうしたと思う?」と、読みながら質問をはさむ。よかれと思ってのことですが、質問が続くと、絵本の時間がテストの時間になります。子どもは答えを探しはじめて、話の中にいられなくなります。
質問が生きるのは、絵本の側が最初からそう作られているときです。きんぎょがにげたの「どこ?」は、本文そのものが問いかけの形なので、聞いていい問いです。
それ以外のときは、読み終わったあとも、感想を聞かなくて大丈夫です。黙ってページを閉じる。子どものほうから何か言い出したら、そこで聞けば十分です。言わない日も、届いていないわけではありません。
5. 最後まで読めなくてもいい
途中でどこかへ行ってしまう、同じページだけ何度も開く、別の本を持ってくる。どれもよくあることです。
1冊を読み通すことは目標ではありません。とくに小さいうちは、声が聞こえている時間があれば十分です。
読む本を子どもが選ぶ、というのも大事なところです。大人から見て簡単すぎる本、何十回も読んだ本を持ってきても、そのまま読んであげてください。同じ本をくり返し読みたがる時期には、そうしたい理由があります。
小さなコツのまとめ
| 場面 | よくある形 | 変えてみる |
|---|---|---|
| 持ち方 | 本が大人側に傾く | 子ども側に向け、指は絵にかけない |
| めくり | 読み終えてすぐめくる | 絵を見る間を少し残す |
| 声 | 声色をがんばる | 速さと大きさだけ変える |
| 途中 | 質問をはさむ | 本文が問う形のときだけ聞く |
| 読後 | 感想をたずねる | 黙って閉じる |
まとめ
読み聞かせで効くのは演技力ではなく、絵が見えているか、めくる間があるか、そして質問しすぎないかどうかです。上手に読むより、同じ本をくり返し読めるほうが大切です。 まずは短い1冊から試してみてください。0歳から読める絵本や3歳から読める絵本の一覧も、選ぶときの参考になります。