お話の骨組みが決まって、いざ文章を書きはじめると、今度は「書きすぎてしまう」という壁にあたります。
絵本の文章は、小説の文章とも、童話の文章ともちがいます。読むのは大人の声で、聞くのは子どもの耳。そしてとなりには、いつも絵があります。絵本のお話の作り方の続きとして、文章を書くときの考え方と削り方をまとめます。
絵で言えることは書かない
絵本の文章がいちばんよく陥るのは、絵に描いてあることをもう一度言葉で説明してしまうことです。
たとえば「赤いぼうしをかぶった女の子が、ドアの前に立っていました」という文があるとします。絵を見れば、ぼうしが赤いことも、ドアの前にいることもわかります。この文で言葉が担うべきなのは、絵に描けないこと、たとえば「ノックしようか、どうしようか」という女の子の気持ちや、ドアの向こうから聞こえてくる音のほうです。
はじめてのおつかいの、お店で声が出ない場面を思い出してみてください。言葉が少ないからこそ、聞いている側は女の子といっしょに息を止めます。文章は絵の説明書ではなく、絵と組み合わさってはじめて一場面になる、もう半分の部品です。
書いた文をひとつずつ見て、「これは絵に描ける?」と問いかけてみてください。描けるなら、文からは消せる可能性があります。
声に出して読む
絵本の文章は、黙って目で読むものではなく、誰かの声で読まれるものです。だから書いた文は、必ず自分の声で読んでみます。
声に出すと、目で読んだだけでは気づかないことが見つかります。
- 言いにくい、舌がもつれる
- 息が続かないほど一文が長い
- 同じ言葉がすぐ近くでくり返されている
- 読んでいるうちに、意味よりも音のほうが気になってくる
反対に、声に出すことで良さがはっきりする文もあります。おおきなかぶの「うんとこしょ どっこいしょ」は、声に出してこそ力が出る言葉です。だるまさんがの「だ・る・ま・さ・ん・が」も、ゆっくり区切って読むことが、そのまま体のゆれにつながります。音として気持ちいいかどうかは、目では判断できません。
読み聞かせのコツで書いたように、読み手は上手に読もうとしなくてかまいません。書き手も、ふつうの大人がふつうに読んで無理のない文を目指します。
ページをめくる位置で切る
絵本の文章には、ほかの文章にはない区切りがあります。ページをめくる、という区切りです。
同じ一文でも、どこでページが変わるかで聞こえ方が変わります。「だるまさんが」でページをめくり、次のページで「どてっ」。もし同じページに両方書いてあったら、あの間は生まれません。おやすみなさい おつきさまも、部屋のものにひとつずつ挨拶するたびにページが進むからこそ、言葉のくり返しがそのまま眠くなるリズムになっています。
書いたあとで「どこでめくらせたいか」を考えて文を切っていきます。めくる直前の言葉は、次のページを見たくなる言葉になっているでしょうか。ダミー本を作って実際にめくってみると、紙の上では気づかなかった切れ目の良し悪しがわかります。
意味より先に、音がある
もうひとつ、絵本ならではの文章があります。意味のない音だけでできた文です。
もこ もこもこは「しーん」「もこ」「にょき」といった音と、形の変化だけで1冊が進みます。物語も教訓もありません。文を書いた谷川俊太郎は詩人で、言葉を意味の道具としてだけでなく、音そのものとして扱っています。
すべての絵本をこう書く必要はありませんが、0歳から読める絵本を何冊か声に出して読むと、絵本の文章が「意味を伝える」以前に「声になって楽しい」ことを求められているのがわかります。自分の文章にも、音として読まれる場面をひとつ入れられないか考えてみてください。
削る手順
書いた文章を削る手順を、家でできる形でまとめます。
| 手順 | やること | 見るところ |
|---|---|---|
| 1 | 全文を声に出して読む | 言いにくい・長い・くり返しが多い文 |
| 2 | 絵に描けることに線を引く | 線を引いた部分は消せるか |
| 3 | めくる位置で文を切る | めくる直前の言葉が次を見たくさせるか |
| 4 | ダミー本に貼って読む | 絵と文がどちらも同じことを言っていないか |
| 5 | 誰かに読んでもらう | 読み手がつまずくところ、聞き手が顔を上げるところ |
削ったあとで「言葉が足りないのでは」と不安になったら、足りない分を絵に任せられないかを先に考えます。それでも足りなければ、そこではじめて言葉を戻します。
まとめ
絵本の文章は、絵で言えることを書かず、声に出して読んで削り、ページをめくる位置で切る。この3つをくり返すと、絵と声と言葉がひとつの場面になっていきます。 まずは1冊、好きな絵本の文章だけを書き写して声に出してみると、どこで言葉が少なく、どこで音が立っているかがよく見えてきます。