絵本のお話を考えはじめると、「何が起きて、どう終わればいいのか」で手が止まることがよくあります。
そんなときは、長く読みつがれている絵本の骨組みを借りるのが近道です。絵本の作り方 はじめの一歩で少しふれた「くり返し」と「行って帰る」のふたつの型を、この記事ではもう少しくわしく見ていきます。
型1:くり返し ── 同じことが、少しずつ変わりながら起きる
くり返しの絵本では、同じ場面が何度も起きます。ただし、まったく同じではありません。毎回どこかが少しずつ変わります。
おおきなかぶでは、かぶを引っぱる人が一人ずつ増えていきます。「うんとこしょ どっこいしょ」のかけ声は同じで、並ぶ顔ぶれだけが長くなっていく。聞いている子どもは、次に何が起きるかを予想できるので、安心して声を合わせられます。
てぶくろも、同じ形です。雪の森に落ちたてぶくろに、動物が一匹ずつやってきて、なかに入れてもらいます。やってくる動物はだんだん大きくなり、「もう入らないのでは」という気持ちも、だんだんふくらんでいきます。
三びきのやぎのがらがらどんは、くり返しを3回にしぼった例です。小さいやぎ、中くらいのやぎ、大きいやぎが、順番に同じ橋をわたります。回を重ねるごとに、橋の下のトロルとのやりとりの緊張が高まります。
くり返しの型で大事なのは、変えるところと変えないところを決めることです。
- 変えないもの:かけ声、せりふ、場面の形
- 変えるもの:人数、大きさ、強さ、こわさ
変えないものがあるから、子どもはいっしょに言えます。変えるものがあるから、ページをめくりたくなります。
型2:行って帰る ── 出かけて、何かがあって、戻ってくる
もうひとつの型は、主人公がいつもの場所から出かけて、また戻ってくるお話です。
かいじゅうたちのいるところでは、部屋に閉じこめられたマックスが、かいじゅうたちの島へ向かいます。遠くで思いきり暴れて、そして帰ってきます。行った先がどんなにふしぎな場所でも、帰る場所があることで、子どもは安心して最後まで聞いていられます。作者のモーリス・センダックは、絵の大きさまでこの行き来に合わせて変えています。
行って帰るお話の「行き先」は、遠い島でなくてもかまいません。はじめてのおつかいは、家からすぐそこのお店までの道のりです。大人にとってはほんの数分の距離でも、はじめてひとりで歩く子にとっては大冒険になります。こんとあきは、汽車に乗っておばあちゃんの家へ向かう旅です。
行って帰る型では、出かける前と帰ったあとで、主人公の中で何かが変わっていることを意識します。場所は元に戻っても、気持ちは元どおりではない。その差が、読み終えたあとの余韻になります。
ふたつの型をくらべる
| くり返し | 行って帰る | |
|---|---|---|
| 骨組み | 同じ場面が少しずつ変わりながら続く | 出かける → 何かがある → 戻る |
| 子どもが楽しむところ | 次を予想して、いっしょに言う | 知らない場所へ行くどきどき |
| 向いている年齢の目安 | 小さい子から | 少し長いお話が聞けるころから |
| 作るときの要点 | 変えるものと変えないものを決める | 帰ったときに何が変わったかを決める |
もちろん、ふたつの型は組み合わせることもできます。行った先で同じことが3回起きる、という作りの絵本もたくさんあります。
自分のお話を型に当てはめてみる
書きためたアイデアがあったら、次のどちらかの一文にしてみてください。
- くり返しなら「〇〇が、△△するたびに、□□が増えて(大きくなって)いく」
- 行って帰るなら「〇〇が、△△へ行って、□□を持って(知って)帰ってくる」
一文にならないときは、まだお話の芯が決まっていないのかもしれません。反対に、一文になれば、あとはページに割りふるだけです。
型は窮屈なきまりではなく、迷ったときに戻れる地図です。型どおりに作ってみて、物足りなければそこから崩していけばいい、くらいの気持ちで使ってみてください。
まとめ
絵本のお話づくりに迷ったら、「くり返し」と「行って帰る」のどちらかの型に当てはめてみるのがおすすめです。くり返しなら変えるものと変えないものを、行って帰るなら帰ったときに何が変わったかを決めると、お話の芯が見えてきます。 型の手ざわりを知るには、3歳から読める絵本を何冊か続けて読んで、骨組みだけを書き出してみるのも役に立ちます。