お話ができて、さあ絵を描こう、と思ったとき。いきなり大きな紙に1場面ずつ描きはじめると、途中で「この場面、前とほとんど同じだ」と気づいて描き直すことになりがちです。
その前にやっておきたいのが、全ページを小さな枠に並べて描くサムネイルです。ダミー本を作ってみようでは「めくって一場面ずつ確かめる」方法を書きました。サムネイルはその一歩手前で、反対に「全体を一度に見渡す」ための下描きです。
サムネイルは「全体を一枚で見る」ラフ
サムネイルは、親指の爪(thumbnail)ほどの小さな絵、という意味で使われる言葉です。絵本づくりでは、すべての場面を1枚か2枚の紙に小さく並べて描いたものを指すことが多いです。
小さく描く理由は、細かく描けないからこそ、大事なことだけが残るからです。誰がどこにいて、何をしているか。絵の中でいちばん大きいものは何か。それ以外は、描きたくても描けません。
枠の作り方 ── 見開きを1つの横長の四角に
まず、紙に枠を並べます。絵本はなぜ32ページ?で作った台割があれば、その場面の数だけ枠を用意します。
- 見開き(左右2ページ)を、横長の四角1つとして描く
- 四角の真ん中に縦線を1本引いて、綴じ目(ノド)の位置を示す
- 枠の下に、場面の番号と、その場面で読む文を短く書く
枠は名刺より小さいくらいで十分です。紙1枚に全場面が収まると、ひと目で見渡せます。
1つの枠に描くのは3つだけ
小さな枠の中に描くのは、次の3つだけにしぼります。
- 主役がどこにいるか(画面の右か左か、大きいか小さいか)
- その場面でいちばん見せたいもの(できごと、表情、場所)
- 文を置く場所(絵の上か下か、白いところか)
人物は丸と線で十分です。背景は、地面の線や家の形がひとつあれば場所が分かります。色は塗りません。鉛筆で、消さずにどんどん描き、気に入らなければ横に新しい枠を描き足します。
並べて見て、確かめること
全場面が並んだら、少し離れて紙全体をながめます。見るところは、たとえば次のようなことです。
| 確かめること | 見るポイント |
|---|---|
| 絵の大きさの変化 | 主役の大きさや絵の広さに、お話の盛り上がりと合った波があるか |
| 同じ構図の続きすぎ | 似た向き・似た大きさの場面が何枚も並んでいないか |
| 場面の飛び | 前の場面から次の場面へ、読者がついていけるつながりがあるか |
| 文の量のかたより | 文が多い場面が一か所に集まっていないか |
絵の大きさの変化は、並べて見るといちばんよく分かります。かいじゅうたちのいるところは、はじめのページの絵が小さく、まわりに白い余白があります。マックスの空想がふくらむにつれて絵がページいっぱいに広がり、かいじゅうたちの島では文字のない見開きが続きます。こうした波は、一場面ずつ描いていると気づきにくく、全体を並べて初めて形が見えます。作者はモーリス・センダックです。
反対に、あえて変えないことで効果を出す絵本もあります。ちいさいおうちは、おうちの位置を変えずに、まわりの風景だけが変わっていきます。「変えない」と決めたものがきちんと同じ場所にあるかどうかも、サムネイルを並べると確かめやすくなります。
場面の飛びも見ておきたいところです。はじめてのおつかいのように、家を出てお店に着くまでの道のりそのものがお話になる絵本では、場所が少しずつ移っていく流れが大切です。並べたときに、途中の一場面が抜けたように見えないかを確かめます。
サムネイルで直して、ダミー本へ
並べて見て気になったところは、サムネイルの段階で直します。似た場面が続いていたら、片方の主役を大きくする、遠くから見た絵にする。盛り上がりが弱ければ、その場面だけ見開きいっぱいに広げる。場面の数が台割より多ければ、どれかを削ります。
小さな絵なので、何度描き直しても手間はわずかです。直し終えたら大きめのラフに描き起こし、ダミー本に綴じてめくってみてください。めくると違って見えたら、またサムネイルに戻ります。
まとめ
サムネイルは、全場面を小さな枠に並べて描き、絵本の流れを一枚で見渡すためのラフです。主役の位置・見せたいもの・文の場所の3つだけを描き、絵の大きさの波や似た場面の続きすぎを、並べた目で確かめます。 全体の手順は絵本の作り方 はじめの一歩にまとめています。手元の絵本を見開きごとに小さく描き写してみるのも練習になります。4歳から読める絵本から一冊選んで、試してみてください。