絵の道具がそろうと、つい全部の色を使いたくなります。けれど、色が多いほど画面がにぎやかになり、読む子どもの目がどこに向かえばいいのか迷ってしまうこともあります。
絵本の絵の描き方いろいろでは「どう描くか」を見ました。ここでは、その前に決めておきたい「どの色を、いくつ使うか」を、紹介済みの絵本を例に考えます。
色をしぼると、目が向かう場所ができる
かさは、文字のない絵本です。黒い線で描かれた雨の町のなかで、色がついているのは女の子の赤いかさだけ。ページをめくるたび、子どもの目は自然と赤を探し、女の子がいまどこを歩いているのかを追いかけます。
ことばで「ここを見て」と言わなくても、色がその役目をしてくれます。色数が少ないほど、ひとつの色が持つ力は強くなります。
ゆきのひも、白い雪の画面にピーターの赤い防寒着がくっきり浮かびます。主役に目立つ色を一つだけ与え、まわりを静かな色でまとめると、どのページでも主役を見失いません。
色そのものを登場人物にする
あおくんときいろちゃんでは、色が主人公です。レオ・レオニは、ちぎった色紙のまるに顔も手足もつけず、青と黄色という色だけで、だれがだれなのかを見分けられるようにしました。
ここで大切なのは、色の数が少ないことです。登場する色がかぎられているから、二つの色が重なって新しい色が生まれたとき、読む人はすぐに「あっ」と気づけます。色に役割を持たせたいときは、その色をほかの場面で気軽に使わないことがコツです。
少ない色で、はっきり見せる
ゆきのひのうさこちゃんは、はっきりした線と少ない色で描かれています。白い雪の画面に、うさこちゃんの服の色が映えて、小さい子でもどこに何があるかがすぐにわかります。
ディック・ブルーナの絵本のように、形を単純にして色を少なくすると、まだ絵を読みなれていない子どもにも伝わりやすい画面になります。対象の年齢が低いほど、色をしぼる意味は大きくなると考えてよいでしょう。
もりのなかのように、黒一色で描く方法もあります。色がないことが、かえって空想の森の奥行きになっています。
描く前に、色を決めておく
色数をしぼるには、描きはじめる前に「使う色の表」を作っておくと迷いません。
| 決めること | 例 | ねらい |
|---|---|---|
| 主役の色 | 女の子のかさは赤 | どのページでも主役が見つかる |
| まわりの色 | 町は黒い線と白 | 主役の色をじゃましない |
| 意味のある色 | 二つが重なると緑 | 物語の大事な場面で使う |
決めた色は、全ページで同じにそろえます。主役の服の色がページごとに変わると、子どもは別の人物だと受けとるかもしれません。
試すときは、ダミー本の場面を何枚か選び、色鉛筆でざっと塗ってみます。並べて見て、主役がすぐに見つかるか、色が多すぎて目がちらつかないかを確かめましょう。家で印刷したり、コピーしたりすると色の見え方が変わることがあるので、仕上げの前に一度、実際に出力して確かめておくと安心です。
まとめ
色は、たくさん使うほど豊かになるとはかぎりません。主役の色を一つ決め、まわりを静かにまとめるだけで、ことばに頼らずに読む人の目を導けます。 まずは手もとの絵本を開いて、1ページに何色使われているか数えてみてください。2歳から読める絵本や3歳から読める絵本の中にも、少ない色で描かれた絵本がたくさんあります。