お話の骨組みが見えてくると、次に決めたくなるのが「だれのお話にするか」です。
絵本の主人公は、人の子どもだけではありません。ねずみ、くま、犬、ぬいぐるみ、ときには色のまるまで主人公になります。絵本のお話の作り方の続きとして、主人公をどう選び、どう形にしていくかを、紹介済みの絵本を例に見ていきます。
動物の主人公 ── 「だれでもない」から、だれでも重ねられる
動物を主人公にすると、年齢や性別、住んでいる場所などが少しぼやけます。そのぶん、読む子どもは「これは自分のことだ」と思いやすくなります。
しろくまちゃんのほっとけーきのしろくまちゃんは、くまの姿をしていますが、やっていることは2歳ごろの子どもそのものです。たまごを落としたり、粉をこぼしたりしながら、お母さんとホットケーキを作ります。読む子は、しろくまちゃんをくまとしてではなく、自分と同じ年ごろの子として見ています。
ぐりとぐらののねずみのふたりも、森で料理をする小さな子どものような存在です。体が小さい動物を選ぶと、大きなたまごや森の広さが、子どもの目から見た世界の大きさとそのまま重なります。
いっぽうで、動物らしさを残すかどうかは作り手によってちがいます。ピーターラビットのおはなしは、服を着ていても骨格や動きは本物のうさぎとして描かれています。動物を「子どもの代わり」にするのか、「動物そのもの」として描くのかを、最初に決めておくと絵の方向が定まります。
人の主人公 ── 暮らしの手ざわりがそのまま出る
人の子どもを主人公にすると、家の様子や町並み、着ている服など、暮らしの細かいところまで描くことになります。そのぶん、場面に具体的な手ざわりが生まれます。
ゆきのひのピーターは、赤い防寒着で雪の町へ出かけ、足あとをつけたり、雪の上に寝ころんだりします。大きな事件はなくても、ひとりの子のうれしい一日として読めるのは、主人公が具体的な子どもだからです。同じピーターはピーターのいすにも登場し、妹が生まれたあとの気持ちが描かれます。
はじめてのおつかいも、人の子どもでなければ成り立たないお話です。お店で声が出ない、坂道で転ぶ。現実の町のなかで起きることだからこそ、読む子は「自分にもありそう」と感じます。
人の主人公では、名前と年ごろ、そして「いま何がしたいか」 を決めておくと、場面ごとのふるまいがぶれにくくなります。
人と「人でないもの」を組み合わせる
人の子どもに、動物やぬいぐるみの相棒をつける形もあります。
こんとあきは、女の子のあきと、きつねのぬいぐるみのこんの旅です。こんがあきを守る場面と、あきがこんを守る場面があり、ふたりの立場が途中で入れかわります。主人公をふたりにすると、ひとりでは言えない気持ちを相棒のせりふとして出せるようになります。作者は林明子です。
形だけの主人公 ── 色や物でも気持ちは伝わる
あおくんときいろちゃんの主人公は、顔も手足もない色のまるです。それでも、喜んだり、泣いたり、走ったりしているのがちゃんと伝わります。作者のレオ・レオニは、ちぎった紙だけでこの主人公たちを作りました。
主人公の気持ちは、目や口がなくても、動き・位置・ほかのものとの距離 で伝えられます。絵を描くのが得意でない人ほど、形をしぼった主人公から試してみる価値があります。
選び方をくらべる
| 動物 | 人 | 人+相棒 | 色や物 | |
|---|---|---|---|---|
| 子どもが重ねやすいところ | 年齢や性別がぼやけ、だれでも入れる | 暮らしがそのまま自分と似ている | どちらかに自分を重ねられる | 気持ちだけを受けとれる |
| 作るときに決めること | 動物らしさをどこまで残すか | 名前・年ごろ・いまやりたいこと | ふたりの役割と入れかわり | 動きと距離で気持ちを見せる |
| 例 | しろくまちゃん、ぐりとぐら | ゆきのひ、はじめてのおつかい | こんとあき | あおくんときいろちゃん |
迷ったら、同じお話を「動物の主人公」と「人の主人公」で1場面ずつ描きくらべてみてください。どちらのほうが読む子の顔が浮かぶかで、決められることがよくあります。
まとめ
主人公を動物にするか人にするかは、読む子どもがどこまで自分を重ねられるか、どこまで暮らしを具体的に描きたいかで決まります。どの形を選んでも、「この子はいま何がしたいのか」がはっきりしていれば、主人公は動きはじめます。 主人公の幅を知るには、3歳から読める絵本の主人公だけを書き出して、動物・人・それ以外に分けてみるのもおすすめです。